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◆夏の着物  ~絽と紗~

今回は夏の着物・・・と言っても範囲が広いので、盛夏に着る着物、絽(ろ)や紗(しゃ)について考えてみたい。

この絽や紗というのは織り方のことだ。

夏に着るといっても、盛夏ではない6月や9月は透けない単衣(ひとえ:裏地がない着物)や紬を着ると良いとされるが、7月、8月の暑い時期は隙間のある生地を着ると良い。それが紗や絽だ。

竪絽

この画像は絽の着物。竪に隙間があるので竪絽と言う。

反対に横に隙間があるのが横路。下の画像だ。

横絽

少し画面から離れて見た方が分かり易いかも。

次に紗の着物というとこんな感じ。

紗

絽が縦横どちらかの隙間があるのに対し、紗はバランスよく隙間があると言えばよいだろうか。

どちらの着物も裏地をつけない仕立て方をする。紗や絽は盛夏に着ると良いとされるが、紗に関してはそれほど透けなければ単衣の時期に着ても良いと思う。

歴史を少し紐解いてみると、公家では旧暦の4月1日~9月一杯を単衣の時期とし、近世の武家においては5月5日(端午の節句)から9月9日(長陽の節句)までが夏衣装の時節とされた。

一時、テレビや映画でよくやっていた(あのドロドロ加減が受けたのか?)、徳川将軍の大奥では、夏の間でも時期ごとに着る織物が明確に決まっていたそうだ。長くなるので割愛するが、相対的に身分の高い人ほど、単衣の時期が長かったようである。


話を戻すが、絽の着物の歴史ははっきりとは分からないようだが、享保6年(1721年)に、とある呉服屋から奉行所に提出した明細書の中に「呂無地帷子(ろむじかたびら)」とあるのが最も古い記録だと言う。

1800年代の風俗について述べた書物を紐解くと、武士だけではなく町人にも単衣の着物や羽織として広まっていたのが読み取れる。


次に紗の方の歴史を調べてみたが、これは絽よりももっと古かった。正倉院に納められた裂の中に紗の裂地が残っていたのだ。また紗には生地自体に紋様を織り込む「紋紗」というものがあるが、これは現在の着物ではあまり見かけたことがない。(母や祖母の着物であったら貴重品だと思います)

因みに参考資料で挙げた紗の画像は紋紗ではなく、紗の生地に紋様を染めたものです。

次回は別の角度で夏の着物について考えてみます。



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Tag:夏の着物  comment:0 

◆着物の保管について 防虫剤の事故

今回は着物の保管について少しお話します。

大切な着物の保管となると、防虫剤を入れている人も多いと思う。実はこの防虫剤、気を付けないと着物に思わぬダメージを与えることがあるのをご存知だろうか?

具体的にどんなダメージがあるかと言うと、着物が変色したり、訪問着・色留袖・黒留袖に多いが、着物に施された金彩加工が剥がれたりするのだ。


防虫剤事故-crop


まず、一言に防虫剤と言っても実は成分的にいくつもの種類に分かれる。パラジクロールベンゼン、ナフタリン、樟脳、エムペントリンなどだ。

この中で、パラジクロールベンゼンが、金彩に使われた接着剤の成分と化学反応を起こすことがある。しかしこれもはっきり断言出来る訳でもない。濃度や金彩の量にも関係してくるからだ。

ただ、いろいろと調べたり過去の経験を照らし合わせてみると、どうも「防虫剤の併用」が最も怪しい。ご存知の通り、防虫剤は一度入れたら永久的に持つものでは無い。

1年ないし半年で交換すると思うが、この交換時が曲者で、前に入れたものと違うメーカーのもの(成分が違うもの)を入れたりすると事故が起きやすくなるようだ。
 

この防虫剤の併用による事故は何も着物だけではなく、プラスチック製のボタンが溶けたり、箪笥の奥に大事に保管してあったパールのネックレスなどの光沢が褪せてしまったりする。

パールの変色の話を聞いた時、防虫剤の事故だと思ったが聞けば一種類しか入れていないとのこと。しかし後で分かったことだが、保管に用いた箪笥自体に最初から防虫効果が施してあった。成分が違ったことで化学反応が起こったのだろう。


話を着物に戻すが、ウール製品と違い、正絹(しょうけん:絹100%のこと)の着物は実は殆ど虫は食べない。

着物になる絹糸は精練(せいれん:天然繊維の絹から不純物を取り省くこと)してあるので、虫からすればうま味が極端に減るからだ。
 
正絹の着物の場合は、防虫剤を入れるより、むしろ湿気の方に気をつけた方が良い。カビの原因になるからだ。定期的に箪笥の引き出しを開けたり、乾燥剤を入れた方のが良いと思う。
 

日本の場合、特に6月~9月までは湿気の多い時期になるので、この時期は意識して乾燥剤を入れたり、着物を保管してある部屋に除湿器を置くと良いと思います。
 
建物や地域によって部屋の湿度は違うと思うが、梅雨から真夏の時期に除湿器をかけると短時間でびっくりするくらい水が溜まります。





Tag:着物保管  comment:0 

◆浴衣の話 ~紅梅織について~

暦の上では5月5日(立夏)が過ぎたので夏ということで、今回は浴衣についてのブログです。

浴衣のルーツを辿ると「湯帷子(ゆかたびら)」に行き着く。

 湯帷子とは、平安時代頃では貴族が入浴時に来ていた着物のこと。麻や木綿製で後に入浴後に着られるようになり「浴衣」となった。



現在では、夏の風物詩的にこの浴衣を連想する人も多いと思うが、夏祭りなどで自分も着るし、また着ている人を見ると良いなと思う。



素材で言えば、綿が多い。中には麻や綿の混合の生地もある。

浴衣は気軽なものであるが、柄や織り方によっては夏の着物感覚で着れるものもある。



柄や織りについて例を挙げ始めると切りがないので、今回は浴衣でしか見たことがない織り方、「紅梅織」について詳解します。
 紅梅織1

見た方が早いので画像を先に載せますが、織上りはこのような四角が集合したような見た目になる。

 太さの違う二種以上の糸を用いて織ることで、織上りはフラットではなく凸凹した高低差のある生地になる。



しかし、何故「紅梅」というのか?

紅梅織の反物を何反見ても、どこにも梅を連想させるものはない。



手元の資料によれば、織田信長がいた時代、山科言継(やましなときつぐ:公家の人)なる人物が残した日記の一節に、この紅梅について書かれた箇所があるそうだ。

 ただ、この日記によるところの紅梅とは、どうも織のことではなく色目を指しているようである。

 紅梅織1



ここまできて、ああ、やっぱり紅梅とは色のことかと思ったが、まだ何かモヤモヤしたので調べてみたら、どうも「紅梅織」という漢字には「勾配」や「高配」の文字もあると分かった。

 結局のところ、何時の時代に出来たのかは分からず終いだったが、推測するに先の日記に出て来る紅梅色の着物が、この織り方になっていたからでは・・・などと考えたりする。

 紅梅織が流行したのは明治2,30年代。今日では綿で出来た綿紅梅と、綿と絹で織られた絹紅梅がある。

浴衣の織にもいろいろあるが、個人的に紅梅織はあの独特のしゃり感と風合い、透けて見えることによる清涼感が良いなと思います。





Tag:浴衣  comment:0 

プロフィール

もみじ

Author:もみじ
名古屋市西区で着物屋を営んでいます。
主に着物(仕事)を通じた独り言です。

お着物のことなら何でもご相談下さいませ。

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